研究概要 |
交付申請書に記載した研究実施計画に従い、以下のような2つの研究課題につき研究を行い、それぞれ成果を得た。 1.構造脂質光学異性体の迅速な分析条件の検討 銀イオン結合型HPLCによるABA型構造脂質とAAB(もしくはBAA)型構造脂質との分離については、A=n-オクタン酸、B=エイコサペンタエン酸(EPA)の相互分離の成功に引き続き、A=n-オクタン酸、B=ドコサヘキサエン酸(DHA)についても相互分離を試み、同一溶出条件で分離できることがわかった。DHAの場合は、1-DHA-2,3-dioctanoyl-sn-glycerolの保持時間は23分、1,2-dioctanoyl-3-DHA-sn-glycerolのそれは47分ときわめて離れており、分離は良好であった。従って、もう1つの異性体1,3-dioctanoyl-2-DHA-sn-glycerolも含めた3種類の異性体の同時分離も実現できた。 2.立体特異性を有するリパーゼのスクリーニング EPAとtrioctanoylglycerolとの反応(アシドリシス反応)によるAAB型構造脂質(A=n-octanoyl,B=EPA)の合成において、1-EPA-2,3-dioctanoyl-sn-glycerolかもしくは1,2-dioctanoyl-3-EPA-sn-glycerolのうちいずれかを過剰に生成するリパーゼ(主として微生物起源)をスクリーニングした。その結果、Rhizomucor miehei, Carica papaya, Fusarium heterosparum由来のリパーゼは前者を、Candida antarctica, Rhizopus oryzae, Rhizopus delemer由来のリパーゼは後者を過剰生成することが判明した。よって、適当なリパーゼを選べばどちらの光学異性体でも生産ができる道が拓けた。
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