BPV12とBPV12-delの全ゲノム解析を行ってその違いを比較するために、BPV-12とBPV12-delの全ゲノムをpUC19とpcDNA3.1ベクターに組み込んだ全ゲノム分子クローンを構成した。一方、大腸菌によるタンパク発現をみるためBPV12とBPV12-delの各初期遺伝子(E1、E2、E4、E7、E8)を増幅させ、それぞれpUC19ベクター内に結合させた。真核細胞における発現をみるためにE1とE2遺伝子はpcDNA3.1ベクターにも組み込んだ。DMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)-10%FBS(ウシ胎仔血清)培地にて培養したHela細胞にpBPV-12のpE1、pE2ならびにpBPV-12-delのpE1、pE2の組換え体プラスミドをトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞からDNAとRNAを抽出し、複製と転写を確認するために、Real timePCRと逆転写-Real time PCRを行った。その結果、DNA複製がみられることは確認できたが、mRNAを検出することはできなかった。BPV12の転写も確認できなかった。牛乳頭腫ウイルス(BPV)の潜伏期間は1か月から1年間と予想されることから、トランスフェクションした細胞を10代継代培養したが、BPV12の転写は確認できなかった。Hela細胞に代えて、vero細胞、L細胞、MA104細胞、HRT-18細胞にこれら組み換え体をトランスフェクションしたが、BPV12の複製を確認できたのみでmRNAを検出することはできなかった。マウスの肺および腎臓の初代細胞へのトランスフェクションの結果も同様であった。 以上、新しく発見されたウイルスBPV12が牛の舌に形成された乳頭腫から検出された。同部位から細胞を採取し継代培養を試みたが、不死化は起こらず、連続継代培養ができなかった。乳頭腫ウイルスは感染動物からの分離が困難であることはよく知られているが、全ゲノムで構成された分子クローンをトランスフェクションした細胞の増殖もまた困難であると考えられる。
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