研究課題/領域番号 |
12J03110
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤澤 希望 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | ダイオキシン / 授乳期曝露 / 水腎症 / cPLA2 |
研究概要 |
ヒトを含む哺乳動物の腎臓発達にとって出生前後は重要な時期であり、この時期が化学物質に対して特に脆弱な時期である。環境汚染化学物質であるダイオキシンは齧歯類の新生仔に水腎症を引き起こすが、この作用は生後数日までの曝露に限られる。本研究では、ダイオキシン曝露マウスにおける水腎症を発達時期特異的な毒性現象のモデルと位置づけ、ダイオキシンによる多様な毒性現象の中でも水腎症に焦点を当て、ダイオキシン毒性の発現メカニズムの解明を目的とする。ダイオキシン曝露による水腎症において必須の役割を果たすと報告のあるCOX-2に着目し、(1)ダイオキシン曝露からCOX-2の発現誘導に至るまでの経路及び、(2)COX-2の発現誘導から毒性病態の発現に至るまでの経路を明らかにする。このようにCOX_2を軸に水腎症の原因因子を解明することで、曝露から発症に至るまでの道筋を分子レベルで理解することが可能となる。 上記目的を達成するために本年度は、COX-2上流に位置するcPLA2のダイオキシン毒性への関与を明らかにすることで、ダイオキシンによる多様な毒性を引き起こす初期的な原因因子を探ることを短期的目標とした。cPLA2群の中でも主要なアラキドン酸合成酵素であるcPLA2αのノックアウトマウスを用い、ダイオキシン曝露実験を行った所、ダイオキシン曝露した野生型マウスでは全てのマウスで水腎症が発症したのに対し、cPLA2αノックアウトマウスでは曝露による水腎症発症率が有意に低下することを見出した。さらに、cPLA2α野生型マウスでは、ダイオキシン曝露によりCOX-2やmPGES-1のmRNA発現量、および尿中PGE2濃度が上昇していたのに対し、cPLA2αノックアウトマウスではそれら変化が消失していた。加えて、ダイオキシン曝露に対するトランスポーター及びチャネルの応答レベルに、野生型マウスとノックアウトマウスとの間で有意な差が見られた。 以上の成果は、上記(1)「ダイオキシン曝露からCOX-2発現誘導までの経路」を解明する上で大きな進歩となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
cPLA2αノックアウトマウスを用いた曝露実験により、ダイオキシンによる水腎症発症率、遺伝子発現量、尿中プロスタノイドの変化について明らかにできたことから、当初の計画通りの結果が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、COX-2およびcPLA2aがダイオキシン毒性の原因因子であることが明らかになった。今後は、COX-2やcPLA2よりもさらに初期的な、ダイオキシンによる多様な毒性を引き起こす原因因子を探るために、これまでに解明したCOX-2やcPLA2aが関与する発症経路にAhRの核移行が関与するかどうかを、AhRの核移行機能を欠如するAhRnlsマウスを用い明らかにする予定である。
|