研究概要 |
本研究では,キャベツ類(Brassica oleracea)の重要病害である萎黄病と根こぶ病の抵抗性遺伝子の同定し,抵抗性遺伝子の進化を明らかにすることを目的にしている。萎黄病については,単因子優性遺伝する抵抗性遺伝子(FocBo1)を抵抗性キャベツ×罹病性ブロッコリーの交雑後代の遺伝子分析から明らかにした(Pu and Shimizu et al.2012)。 その後,FocBo1の推定座乗領域における染色体組換系統を、約1,000個体(F2)より選抜し後代系統(F3)を作成し,選抜後代系統の抵抗性検定と遺伝子型解析によって、約150kbに相当する領域内にFocBo1が座乗することを明らかにした。ファインマップを作成した遺伝子マーカーはシロイヌナズナと近縁種のB.rapaのゲノムデータベースを用いることで効率良く作成することができた。また、近縁種であり全ゲノムが公開されているB.rapaとのゲノム比較解析を行った結果、FocBo1推定座乗領域の相同性領域には病害抵抗性遺伝子特有なモチーフ配列(NBS-LRR)を持つ遺伝子が2つ存在していた。そこで、抵抗性系統からコスミドライブラリーを作成し、目的領域を含むコスミドを選抜、シークエンスをしたところオルソログ遺伝子を確認でき候補遺伝子とした。現在、罹病性シロイヌナズナに形質導入中である。根こぶ病については,当研究室の先行研究で,根こぶ病抵抗性QTLとして,主働抵抗性QTL,pbBo(Anju)1,微働抵抗性QTLとして,pbBo(Anju)2,pbBo(Anju)4を同定している。抵抗性遺伝子の遺伝子単離に向け、3つのQTLについて、QTL領域に染色体組換を起こした個体を選抜するとともに、ファインマップの作成を行なった。作成個体に対して萎黄病同様マップベースによる抵抗性遺伝子の探索中である。
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今後の研究の推進方策 |
萎黄病は、近縁種のBrassicaragaを侵すことが本研究によって明らかにしている。研究課題である、病害抵抗性遺伝子の進化遺伝学的研究を行うためにもB.rapaにおいて抵抗性遺伝子を同定することは必要不可欠であるため,B.oleraceaの実験と平行して,遺伝子の単離を目指している。 根こぶ病抵抗性は量的形質のため微働抵抗性遺伝子の単離は現在までにほとんど前例がない上、B.oleraceaはライフサイクルが長い、自家不和合性のため短期間での組換え近交系を作成できないので,RNA-seqを用いた網羅的な発現遺伝子の推移などによって関連遺伝子を探索する予定である。
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