研究課題/領域番号 |
13305003
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
応用物性・結晶工学
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
佐藤 勝昭 東京農工大学, 工学部, 教授 (50170733)
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研究分担者 |
赤井 久純 大阪大学, 理学研究科, 教授 (70124873)
佐藤 英行 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (80106608)
高梨 弘毅 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (00187981)
今田 真 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (90240837)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2003
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キーワード | MOMBE法 / カルコパイライト型半導体 / CdGeP2:Mn / ZnGeP2:Mn / MnGeP2 / 磁気光学スペクトル / SQUID磁化測定 / 強磁性 |
研究概要 |
この研究では、室温で強磁性を示すカルコパイライト型磁性半導体CdGeP_2:Mnはじめ一連のMn添加カルコパイライト型半導体の物性値を明確にすることを目的として企画された。当初、この物質の作製は、カルコパイライト型半導体のバルク単結晶にMnを蒸着・拡散させることにより行われた。われわれは、まず、CdGeP_2と同じ結晶構造をもつZnGeP_2の単結晶についてMn添加を行い、室温以上にキュリー温度を示すことを確認し、室温強磁性はCdGeP_2特有の現象ではないことを明らかにした。次に、東京大学の協力を得て、ZnGeP_2:MnのMn成膜過程でのin-situの光電子分光により、表面付近はMnリッチな金属相であるが、内部は半導体にMn^<2+>が添加された希薄磁性半導体相であり、この相が室温磁性を主に担っていることを明らかにした。 また、第1原理バンド計算を行い、CdMnGeP_2において強磁性が発現するための条件を調べた。その結果、単純にMnがCdを置換した場合には反強磁性(またはスピングラス)相が安定であるが、MnがGeを置換した場合には強磁性が発現する。MnがGeを置換するのは自由エネルギーの観点からは安定ではないが、格子欠陥を含む場合には十分可能性がある。などの結論を得た。 Mnの単結晶への拡散によっては、試料全体にわたって均一なMn濃度を得ることができない。このためには、薄膜試料についての研究を行うことが必要であるとの観点に立って、CdGeP_2:Mnのエピタキシャル薄膜の成長に取り組んだ。 三元化合物CdGeP_2のMBE成長については報告がないので、無添加試料の作製から始めた。当初は、Cd, Ge, Pの3構成元素をすべて有機金属(MO)ガスソースで供給するMOMBE成長を行ったが、MOガスの分解が起きず、GaAs表面が荒れるだけで、全く何も堆積できなかった。このため、方針を変更して、Cd, Geは固体ソースを用いKセルから通常の分子線源として供給、PについてはMOガスTBP(Tertiary Butyl Phosphine)を熱分解セルで加熱分解して反応性の強いP_2として供給することとした。 CdGeP_2の成長条件は、Cdの高い蒸気圧のため基板温度が高い場合に再蒸発が起きるので低温成膜が必要であるが、低温では原料の基板上での拡散が抑制されるため結晶化が起きないという大変厳しい状況にあり、CdGeP_2多結晶粒の堆積をフォトルミネセンスおよびラマン測定によって確認するにとどまっている。CdGeP_2の成膜と平行して、第1原理バンド計算から存在が予測され、in-situの光電子分光から存在が示唆されたMnGeP_2の成膜を進めた。MnGeP_2については、ほぼカルコパイライト結晶単一相と思われるエピタキシャル薄膜を作製できたことが、X線回折から確認された。この膜につきSQUIDによる磁気特性の測定をおこなった結果、320K付近にキュリー温度をもつ強磁性を確認した。これが、MnGeP_2自身によるものか、XRDでは観測されない微量の強磁性異相によるものかの確認を進めている。
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