研究概要 |
ジオリアクター(地下反応器)の実現のために,亜臨界から超臨界にいたる広い温度・圧力範囲における熱水反応について検討を加えた.研究初年度である今年度は,装置開発および従来行ってきた関連研究をより発展させ,ジオリアクターのための反応プロセスの選定を特に行った. 1.花崗岩の溶解挙動 花崗岩の溶解は,亜臨界から超臨界の遷移域の特に高圧側で顕著に生じ,低圧側では溶解量が激減することを明らかにした.このことは,超臨界状態においても必ずしも岩石と熱水との反応性は一応ではなく,超臨界水の領域は液相的性質を示す領域と気相体的性質を示す領域とに分けられることを示している. 2.花崗岩構成造岩鉱物の選択的溶解 花崗岩の構成する主な造岩鉱物は,石英と長石であるが,このうち石英は亜臨界から超臨界の高圧側で溶解が顕著であり,長石類はより低圧側でより溶解することを明らかにした. 3.高温高密度蒸気による石英に破壊 高温高密度蒸気と石英を反応させると,石英に熱衝撃と類似したき裂が生じることを明らかにした.この現象を利用すれば,地下において地熱貯留層の熱交換面積を飛躍的に向上させることが可能となる.今後,破壊メカニズムの解明を行い,地熱貯留層の能力拡大をはかりたい. 4.硫黄の自己酸化還元反応 亜臨界状態での硫黄と水との反応を追跡し,硫黄の自己酸化還元反応の生じる反応条件と反応速度を明らかにした.この結果から,水熱プロセスによる硫黄の処理と,光触媒による水素の発生と連動させた硫黄の循環システムの構築へ展開することが可能となる.
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