研究概要 |
1.硫黄の熱水中における自己酸化・還元反応 硫黄の自己酸化還元反応は4S+4H2O=3H2S+H2SO4に表されるように,硫黄の一部は還元されて酸化数0から-2,また,一部は酸化されて0から+6へと変化する,単一の出発物質から酸化と還元が同時に起こる反応である.テフロン内張オートクレーブ内に硫黄粉末0.005gと蒸留水(pH6),KOHによってpH10および12に調整した溶液20mlを密封し,200℃において3,5,10,20時間の反応を行った.この結果,反応時間3および5時間では,反応後に封入した硫黄粉末と同様の硫黄粉末が残留しているが,反応時間が10時間と20時間では初期pHが6と10の場合において褐色の固体硫黄が残留している事が確認された.一方,最もアルカリ条件であるpH12の場合にはどの反応条件においても硫黄の残留は確認されなかった.また,実験終了後の溶液中における硫酸イオン濃度の測定結果から,本実験条件下での反応は3時間から5時間程度で平衡状態に達していると考えられる. 2、超臨界流体用内部可視オートクレーブを用いた溶液挙動観察 400℃60MPa程度まで内部観察可能なサファイヤ窓付きオートクレーブを用い,オートクレーブ内に封入した各種溶液の気液界面が消失する状態まで温度を上昇させた後に冷却を開始し、再び気液界面が現れる温度および圧力を溶液の臨界点とした.その結果,蒸留水のみ(単成分系)では超臨界状態から気液2相状態への遷移が臨界温度付近で比較的短時間(10秒程度)で終了するが,2成分および3成分系では遷移と考えられる状態が数分間(温度換算で約3-4℃)程度継続する事が確認された.蒸留水と臨界温度・圧力を上昇あるいは下降させる物質による2成分系においては,蒸留水に加えた物質濃度に比例した直線が飽和水蒸気気圧曲線上から分岐するが,蒸留水にこれらの物質をすべて加えた3成分系では,2成分系で示される直線によって挟まれる領域に臨界点が現れることが確認できた.
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