研究概要 |
地熱や地下空間を利用した新しい物質変換システム:ジオリアクター(地下反応器):実現のための反応システムの検討を行った.現在,硫化物を光触媒として用いて,イオウ化学種から水素得る反応が検討されているが,光触媒の性能を十二分に発揮させるためには,イオウ化学種の制御が重要である.ジオリアクターでは特に,水とイオウとの反応により,元素イオウおよび水素発生後の硫化物イオウイオンから水素発生に適したイオウ化学種への変換を行うことも目的とした反応実験を行った.実験条件は,温度が150℃から200℃,pH条件を強酸性から強アルカリ性まで変化させ,それぞれの条件でのイオウ化学種の種類と量比,およびこの結果,光触媒に感受性があるイオウ化学種の転換率を算出した.イオウと水との反応はきわめて複雑で,反応温度,版の時間の変化により得られる化学種は変化し,平衡条件を求めることができなかったが,一方で,適切な条件を与えることにより,高い転換率を得られることがわかった.特に,弱アルカリ性溶液で200℃程度の温度条件がもっとも転換率が高かった.このことから,海水を用いてイオウ反応を行わせることにより,目的イオウ化学種を高い転換率で得られることわかり,ジオリアクターとしての水設計(ウォーターデザイン)指針を得ることができた. 本研究で開発した手法を用いれば,200℃程度の比較的マイルドな条件で,海水循環により,pHを弱アルカリ性に維持したまま,適切なイオウ化学種を40%程度の転換率で得ることが可能である.今後,この反応システムをもとに,ジオリアクターのパイロットプラント設計が可能であろう.
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