研究分担者 |
稲岡 司 熊本大学, 医学部, 助教授 (60176386)
河辺 俊雄 高崎経済大学, 政策科学部, 教授 (80169763)
大塚 柳太郎 東京大学, 医学研究科, 教授 (60010071)
須田 一弘 北海学園大学, 人文学部, 教授 (00222068)
松村 康弘 国立健康・栄養研究所, 健康栄養情報・教育研究部, 部長代理 (60181757)
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研究概要 |
東南アジアや太平洋地域の発展途上国におけるそれまで国家や世界から比較的隔離された自立的・自給的集団は近年の経済のグローバリゼーションと関連した企業や国家(行政)主導による開発の影響により急激な生活の変容をとげつつある。本研究はこれら開発の影響と生活の変容を生態学的視点からの解明を目的としている。本年度は,マレーシア半島部トレンガヌ州の先住民集団とマレー農村,およびトンガ王国ハノア村で環境と生活の変化について基礎データを収集する調査を行った。とくに,開発の実態,自然環境の改変の程度,資源利用,生業活動(時間・空間利用),生活時間配分,食物・栄養摂取,家計調査(現金収入と支出)が主な調査項目である。熱帯雨林にすむ狩猟採集民であった先住民集団は,生活空間がダムやアブラヤシのプランテーションによって大きく改変され,伝統的な資源利用がますます困難になり,現金にほぼ完全に依存するようになり,生業活動も大きく変化した。政府は低級農民化政策のもとで先住民集団に対してさまざまな経済開発プロジェクト(たとえば,換金作物の栽培,家畜飼養,川魚の養殖,観光産業など)を行ってきたが,それらいずれも成功していない。枯渇化が著しいトウや香木の採集,アブラヤシのプランテーションや木材伐採集積場での賃労働で購入食物の確保に精一杯の常態である。調査対象のマレー農村では,伝統的な農業や漁業からの若者離れが目立ち,周辺の石油コンビナートや大都市での雇用の機会を求めるようになった。これらの調査地では,村落周辺の自然環境と土地利用の変遷についてリーモートセンシング衛星データを用いて解析中である。トンガでは,健康に悪影響を及ぼす肥満の問題を,遺伝学,生理学的要因と食生活,生活慣行の関連で分析・解析中である。
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