研究課題/領域番号 |
13410095
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩本 通弥 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60192506)
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研究分担者 |
桑山 敬己 創価大学, 文学部, 教授 (50288057)
川森 博司 甲子園大学, 人間文化学部, 助教授 (20224868)
篠原 徹 国立歴史民族博物館, 民俗研究部, 教授 (80068915)
足立 重和 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (80293736)
高木 博志 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (30202146)
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キーワード | 民俗文化 / 伝統文化再生法 / ふるさと文化再興事業 / 世界遺産 / 負の遺産 / フォークロリズム / 観光化 / 重要伝統的建造物群保存地区 |
研究概要 |
今年度は3年計画の初年度であるため、現在、議員立法化が構想されている「伝統文化再生法」と、文化庁の「伝統文化を活かした地域おこし」をはじめ、各省庁で進められつつある関連施策の連関性について、まずは検討した。伝統文化再生法は、法案化の前に、国民運動として世論を盛り上げていく方向に方針転換され、2001年7月にはそれを推進する機関として、財団法人「伝統文化活性化国民会議」が設立された。今年度の研究会では、その設立の政治的背景を探るほか、文化庁の事業に新たに登場した「ふるさと文化再興事業」についても検討を加えた。また共同研究会では、民俗文化を活用した地域おこしの実施されている現場の巡検を、いくつか行なって、その共通項の析出に努めた。一つはユネスコの世界文化遺産に指定され、観光客が激増した岐阜県白川村と、隣接の飛騨高山市周辺の観光化をめぐる実態を調査したほか、同様な観点から、村落レベルでの町並み保存(文化庁選定の重要伝統的建造物群保存地区)の先駆的存在である、沖縄県竹富島における観光化の現状も実見した。その一方で、これらとは全く逆のベクトルにある、ひめゆりの塔や平和の礎など、沖縄本島南部の戦跡巡り(戦争遺跡)という、いわば「負の遺産」の観光化についても視野に含めることにした。1990年代以降の文化本質主義批判に対して、民俗学者・人類学者が採った一つの戦略は、フォークロリズムや観光化といった現象を、「現地の人々の主体性」や担い手の「創造過程」といった「主体の真正性」を強調し、これを正当化することだったが、人々がなぜ文化遺産に惹かれるのか、を一つの視角に、受け容れる観光客側の論理も、構築主義的に検討していくことを、次年度以降の共通課題にすることとなった。
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