研究課題/領域番号 |
13410095
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩本 通弥 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60192506)
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研究分担者 |
川森 博司 甲子園大学, 人間文化学部, 助教授 (20224868)
桑山 敬己 創価大学, 文学部, 教授 (50288057)
篠原 徹 国立歴史民俗博物館, 民俗研究部, 教授 (80068915)
足立 重和 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (80293736)
高木 博志 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (30202146)
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キーワード | 地域おこし / ふるさと文化再興事業 / 世界文化遺産 / フォークロリズム / 民俗文化 / 観光化 / グリーンツーリズム / 農水省的「文化」 |
研究概要 |
今年度は3年計画の2年度であるが、現在、文化庁を中心に進められている「ふるさと文化再興事業」と、各省庁が並行して進める関連施策の連関性について検討する一方、それらが具体的に展開されている地域、すなわち「民俗文化」を活用した地域おこしが実施されているヘリティッジ産業の現場を、いくつか巡検して、その共通項の析出するとともに、全体を総体的に把握することに努めた。本年度、共同研究として巡検したのは、一つは宮崎県椎葉村・高千穂町であるが、両地域は「焼き畑の村」として、また「神話の里」として観光地化を志向する一方、その集まった観光客を、グリーンツーリズムによって、より長期滞在させる方向に転換しつつある実態が浮かび上がってきた。この傾向は、「民話の里」として売り出した岩手県遠野市においても、全く同様であり、いわゆる文化観光から、グリーンツーリズムを介した自然観光に移行しつつある共通項が見えてきた。これらは文化庁系のいわゆる「民俗文化」ではなく、農水省系の創られた「文化」「自然」を、観光=地域おこしに活用しようというものであるが、同じく巡検で調査した、福島県桧枝岐村と栃木県栗山村湯西川では、その点が際立っており、観光化に対する態度=地域住民の意識が実に対照的であった。農村歌舞伎でも有名な桧枝岐は、かつては秘境桧枝岐として「秘境」の名を1つの売り物にしていたが、近年、その「秘境」を取り外し「売り」にしない運動が進められていた。農村歌舞伎もあくまで自らの「信仰」であって、観光化に供さないように配慮されているのに対し、県境をはさんでほぼ同じ位置・地形にあって、落人伝説でも共通する栗山村湯西川では、落人も取って、「平家の里」として農水省的「文化」で観光集客を図っている。次年度以降の共同研究として、住民にとって「文化」を売ることについて、その意味をフォークロリズムの観点もまじえながら、検討して行くこととなった。
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