研究概要 |
今年度は,3次ユニタリ群上のSiegel-Weil公式,およびそれの応用としてのテータリフトの内積公式を研究し,次の結果を得た。 1.Dual reductive pair (U(2,1),U(2,2))に関するSiegel-Weil公式について新しい手法で研究し,過去の研究では調べられていなかった特別な試験関数の場合に完全な結果を得た。 2.1の結果を用いて,2次ユニタリ群上の正則保型形式fから3次ユニタリ群上の正則保型形式L(f)をテータ級数を介して構成するKudlaリフトの内積公式を計算し,それがfの保型L関数の特殊値で記述されるという結果を得た。応用として,Kudlaリフトが消えないための新しい規準を得た。 今後は,今年度の研究結果をさらに深めるために,次のような研究計画を予定している。 1.3次ユニタリ群上の一般の保型形式に対するFourier-Jacobi係数の絶対値の平方についてのWaldspurger型の公式の予想を確立し,証明を試みる。 2.1の準備として,Kudlaリフトの場合のFourier-Jacobi係数の場合を考察するために,U(1)上の保型形式の周期とL関数の特殊値との関係を研究する。 また,今年度は、近畿大学・理工学部・大野泰生氏をプログラム責任者として、第10回整数論サマースクール「概均質ベクトル空間」を開催し、本研究費から会議費,旅費の一部や報告集の印刷費等を援助した。サマースクールは大変盛況で、大学院生を含めた若手研究者の知識を高めるとともに、研究者のあいだの交流をはかることができた。
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