研究課題
加速器科学においては、大量のデータを検出器で収集し、解析を行う。シミュレーションを行い、実験データと比較することで、理論との比較を行う。その際、実験データ以上の事象数を生成し、統計誤差の影響を最小限に抑える必要がある。加速器は、大掛かりな装置で、世界中に限られた数しか存在しないので、国際協力による建設や研究が盛んに行われている。様々な国から、多数の機関が1つの研究グループに参加し、協力して研究が行われる。以前は、加速器のある研究機関に赴き、そこにある計算機などの施設を利用して、データの解析が行われた。しかし、インターネットと計算機の発展により、各機関にいながらにして、データの解析を行うために、十分な環境が整いつつある。我々は、このことに着目し、インターネットに接続された、国際的に分散している複数の機関で協調して、データの解析を行うために必要な仕組みの開発に着手した。同じ頃、GRIDという名称で、同様の概念の分散処理を行うための仕組みが注目され、標準化されることとなったので、その枠組みを利用し、当初の目標を達成する手法の開発を行った。これを実現するために必要な機能として、1.認証、2.ファイルディレクトリ、3.高速データ転送、4.ソフトウエアの構成管理の以上4種類がある。これらの環境をPCファーム上に実現し、デモンストレーションを行った。認証に関しては、GRIDの標準ツールであるGlobus Toolkitを利用することとし、必要な環境の構築を行った。ファイルディレクトリは、サンディエゴスーパーコンピュータセンターが開発したSRBを利用し、複数の機関が共通のファイルツリーを共有し、必要に応じて、コピーやレプリケーションが行えるようにした。高速データ転送に関しては、SRBの提供する並列転送、およびGridFTPを用いて、転送性能向上の研究を行った。各機関が同じソフトウエアのバージョンを利用しているか、そうでなければ、アップデートするために仕組みとして、CERNの提供するLCGと呼ばれるGRIDツールなどを調査したが、満足できるものを構築することはできず、今後の課題として残った。
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