研究概要 |
本研究では,地震発生場の準備・発生・余効過程を力学的に理解するために,断層周辺の地殻構造の時空間的な変化を精度良く測定する.解析対象として,1998年9月3日に岩手山の南西部で発生したM6.1の地震を用いる. この地震発生に伴う周辺応力場の変化の推定には,地震断層の詳細な動きが必要なので,強震計データから求められた変位波形をモーメントテンソルインバージョン法により解析し,地震断層運動を推定した.その結果,地震断層は特に浅いところで滑りが発生し,モーメント解放量は4.7x10^∧17Nmであることが明らかとなった.地震断層周辺の基本的な構造を明らかにするために,岩手山周辺の3次元浅部P波速度構造を求めた結果,震源や断層付近は周辺に較べて低速度域となっており,不均質性が強いことが明らかとなった.東北大学の定常地震観測網で記録されていた1998年8月と11月の人工地震波形と相似地震の波形解析を行った.クロススペクトル解析を複数の観測点のデータについて行った結果,地震断層の上盤の極浅いところで少なくとも1%のP波速度低下があることが明らかとなった. 昨年に引き続き,2002年10月に同地域において人工地震実験を行った.人工震源で励起される地震波の時間変化を極力少なくするために,これまでと同様の方法で発破を行った.この発破による地震波を,東北大学理学研究科地震・噴火予知研究観測センターの定常観測点の短周期地震計(HSB, GNB, ANS),三ツ石(MTI)とGNB, ANSにおいて広帯域地震計で記録した.さらに,昨年度実施したMTIとGNBのL字型の短周期地震計アレーによっても記録した.これらのデータの詳細な解析は来年度に実施し,すでに得られている結果と比較し,地震発生場の理解を深める.
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