研究分担者 |
猪俣 敏 国立環境研究所, 大気圏環境部, 研究員 (80270586)
若林 知成 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30273428)
百瀬 孝昌 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10200354)
佐藤 圭 国立環境研究所, 大気圏環境部, 研究員 (10282815)
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研究概要 |
近年、地球環境研究において、指標となる分子中の同位体比に関する議論が盛んである。同位体比から物質の起源を同定したり年代を決定する手法は地球化学において伝統的なものであったが、地球環境研究ではそれに加えて種々の元素の循環機構(いわゆる炭素、硫黄、窒素などの循環)を明らかにするために同位体比測定が行われている。循環機構における同位体濃縮には生物活動による取込や放出によるものや土壌や水(海)中における物質の分解や蒸発による濃縮などに加えて、大気中での化学反応(光化学反応やラジカル反応)における反応速度の同位体間の差異の評価が重要視されている。以上の背景を受けて本研究は気相ラジカル反応における安定同位体間の微小な反応速度の差異をラジカルを直接検出する直接法で精密測定し、上記の問題解決に貢献しようとするもので、本年度は以下の研究がなされた。 (1)ジメチルスルヒドの大気中での酸化反応の解明:ジメチルスルヒドは大気中の硫黄化合物の約50%を占める海洋を起源とする化合物である。ジメチルスルヒドは大気中に放出された後、主にOHラジカルとの反応によりCH_3Sラジカルを生成する。生成したCH_3Sラジカルはこれまで大気中でO_3,NO_2などにより段階的に酸化されSO_2,SO_3に変換されていくと考えられていた。本研究では光イオン化質量分析計を用いてCH_3S, CH_3SO, CH_3SO_2ラジカルを直接検出しこれらのラジカルとCH_3O_2との反応速度を直接測定し、RO_2ラジカルがO_3やNO_2と同程度にCH_3Sラジカルの段階的酸化に寄与していることを見出した。 (2)新しいビノキシラジカルのレーザー誘起ケイ光:5種の新しいハロゲン化ビノキシラジカルのレーザー誘起ケイ光スペクトルを発見し、酸素原子とオレフィン反応の基本フレームに対し新しい知見が得られた。 (3)含硫黄ラジカル(SO, SH, HSOなど)とRO_2ラジカルとの反応(この反応は大気化学で重要である)において、反応速度のD/Hおよび^<34>S/^<32>S効果の比の測定を行った。
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