バミューダ、北米東岸、パナマ、バルバドス、オーストラリアのモートン湾・ポートフィリップ湾、ニュージーランド、モルジブ、およびタイ国において野外調査を行い、すべての場所で標本を採集することに成功した。あわせて、中国金門島、ブラジル、地中海、北海、およびオーストラリアのグレートバリアリーフの標本を交換や寄贈により入手した。その結果、15種(24個体群)のDNA分析用資料を入手することができた。 このうちすでに、約10種、約15個体群のDNAを解析して、次のような興味深い結果をえている。 (1)オナガナメクジウオは形態的にユニークであるが、分子的にも他種と著しく異なることが、mtDNAの配列の違い、および分子系統樹によって判明した。 (2)ミトコンドリアたんぱく質の13遺伝子座を使った10種の分子系統樹により、オナガナメクジウオをのぞいたカタナメクジウオ属、およびナメクジウオ属はそれぞれ単系統群をなすことがわかった。つまりナメクジウオ類は3つの属に分類するのが妥当である。 (3)オナガナメクジウオに、今のところ分子情報だけで区別できる2つの隠蔽種がふくまれ、それらの分岐はかなり深い。 (4)データバンクに登録されているB. lancelolatumのmtDNA配列データは、我々がヨーロッパ(ヘルゴラントとナポリ)産のB. lancelolatum標本を解析した結果と明瞭に異なり、フロリダ沿岸産B. floridaeと酷似する。
|