研究概要 |
水の光完全分解は水素の製造方法としては最も理想的であるが、現在までに有効な触媒がない。そこで、本研究ではドーパントを用いて、酸化物半導体中の電子濃度を制御して、光触媒の活性の向上を検討した。本年度は既に高い活性を示すことがわかっているKtaO_3系触媒について、KとTa比の異なる幾つかの結晶相を合成し、これらについて添加物効果を検討した。まず、アルコキシド法で合成すると固相法では合成できないKa_2Ta_2O_6が合成できることがわかった。また、未添加物ではKa_2Ta_2O_6はKtaO_3より高い活性を有することを見出した。担持金属の影響を検討し、RhOを担持すると活性が向上することがわかった。さらに、大きな水の光分解活性の触媒について検討するために、種々のK/Ta比の酸化物を合成したところ、K_6Ta_<10.8>O_<30>が比較的、大きな水素生成速度を有することを見出した。そこで、このK_6Ta_<10.8>O_<30>についてさらに、Taサイトへのドーパントの添加効果を検討したところ、TaサイトにLa, Sm, Mgを添加すると活性は向上することを見出した。さらに、添加物としてLaを添加すると酸素の発生も認められた。そこで、Laの添加効果を検討したところ、最適の組成はK_6Ta_<10>La_<0.8>O_3で得られることがわかった。そこで、担持する金属の影響をさらに検討し、担持金属としてNiOが最も適することがわかった。最も大きな水素の生成速度はNiO添加1wt%で得られた。一方、興味あることに、CuOを添加した触媒も比較的大きな水素生成速度を示した。そこで、K_6Ta_<10.8>O_3がn型半導体であり、活性を示した担持物がいずれもP型酸化物半導体であったので、p-n接合の形成が活性の向上に有効であると推定された。そこで、今後、p-n接合に着目して検討することで、新しい光触媒が見出される可能性が示唆された。
|