水の光完全分解は水素の製造方法としては最も理想的であるが、現在までに有効な触媒がない。そこで、本研究ではドーパントを用いて、酸化物半導体中の電子濃度を制御して、光触媒活性の向上を検討した。2年度目は、KTaO_3系酸化物の活性向上を目的に、添加物として格子中に添加するのではなく、水溶液中への添加物による表面電子濃度の制御を検討した。その結果、添加物としてハロゲンを添加すると光触媒活性の向上に有効であることがわかった。種々のハロゲン系化合物の添加効果を検討したところ、添加物効果はCl>Br>I>Fの順に向上することがわかった。とくに塩素の添加が有効であることがわかった。一方、添加物効果は対カチオンにも依存しており、カチオンとしてK^+を用いたとき、最も良好な添加物効果が得られた。一方、LiClを添加すると活性は大きく低下した。添加物効果は塩素の価数にも強く依存しており、活性は塩素の酸化数が大きくなるほど、向上し、KClO_4の添加が最も有効であることがわかった。H_2およびO_2の生成速度はKClO_4の添加量の増加とともに増加し、1mMになるように添加した折に最も大きな添加物効果が得られることがわかった。KClO_4はpHを調整後、約半分が化学平衡的に分解していたが、光触媒反応前後での変化はほとんどなく、反応への直接の関与は認められなかった。そこで、触媒表面に吸着し、触媒の電子濃度に影響を与えるものと推定される。このKClO_4を添加した系ではH_2およびO_2の生成速度は反応初期より向上し、それぞれ590および290μmol/hとほぼ水の完全分解を達成できた。
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