研究概要 |
水の光完全分解は水素の製造方法としては最も理想的であるが、現在までに有効な触媒がない。そこで、本研究ではドーパントを用いて、酸化物半導体中の電子濃度を制御して、光触媒活性の向上を検討した。KTaO_3系酸化物の活性向上を目的に、添加物効果を検討した。その結果、Zr, Hf, La及びGaの添加がH_2Oの光分解活性の向上に有効であることがわかった。ホール効果の測定からKTaO_3はn型半導体であり、電子濃度は低原子価のカチオンの添加で低下し、光起電力の測定から励起された自由電子の寿命は添加物により、延びることがわかった。その結果、光触媒の電子濃度の制御は光触媒活性を制御する上で、重要であった。同様の効果はSrTiO_3、Ba_2In_2O_5及びK_6Ta_<10.8>O_<30>でも認められた。結晶構造の効果を検討した。その結果、ゾルゲル法で得られたK_2Ta_2O_6はパイロクロア構造を有しており、ペロブスカイト型構造を有するKTaO_3より、大きな活性を有することがわかった。これは化学組成は同じでも、原子の配列、とくに電子軌道の重なり方が、光触媒活性と重要な関連があることを示しており、今後の、触媒設計の重要な指針となることが示された。水溶液中への添加物による表面電子濃度の制御をさらに検討した。その結果、添加物としてハロゲンを添加すると光触媒活性の向上に有効であることがわかった。種々のハロゲン系化合物の添加効果を検討したところ、添加物効果はCl>Br>I>Fの順に向上することがわかった。とくに塩素の添加が有効であることがわかった。一方、添加物効果は対カチオンにも依存しており、カチオンとしてK^+を用いたとき、最も良好な添加物効果が得られた。
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