都市近郊林における野生生物管理の手法開発に関する総合的研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13460062
• 研究機関: 岩手大学
• 研究代表者: 青井 俊樹 岩手大学, 農学部, 教授 (70125277)
• 研究分担者: 東 淳樹 岩手大学, 農学部, 助手 (10322968) ; 國崎 貴嗣 岩手大学, 農学部, 講師 (00292178) ; 松原 和衛(伊藤) 岩手大学, 農学部, 助教授 (70258804) ; 佐藤 淳 岩手大学, 農学部, 助手 (30250632) ; 平野 紀夫 岩手大学, 農学部, 助教授 (40092308)
• キーワード: ニホンカモシカ / 都市近郊林 / 生息数 / 土地利用 / 血清 / 疫学的調査 / 寄生虫

研究概要

生態調査:岩手大学農学部付属滝沢演習林において、平成14年4月から平成15年3月まで継続してカモシカの生態に焦点を当てたフィールド調査をおこなった。7月、11月には捕獲努力を兼ねた生息数調査をおこなった。6月に、林内にアルパインキャプチャーを設置するとともに、そのトラップ内にカモシカの好む作物(大豆他)を耕作し、生け捕り努力を継続した。食痕調査については周年実施した。12月には約15日間に渡って演習林内全域を踏査し、タメ糞の分布調査をおこなった。これらの結果から、生け捕りには成功しなかったが、昨年まで個体識別されていた5頭に加え、あらたに2頭の新規個体の生息を確認した。タメ糞の分布調査から、環境利用に関する実態が把握され、道路や住宅地から200m以内の林地は忌避されていること、森林タイプとしはスギ人工林や針葉樹人工林がタメ糞の場所として有意に選択されていることなどが判明した。また7月に、生息地改善のための試験プロットとして、林内に小面積(5m×15m他)の皆伐区画を3カ所設定し、林床植生調査をおこなった。今後同プロットにおけるエサ資源の変化とカモシカの利用状況を追跡していく予定である。
疫学、生理学的調査:盛岡市近郊で死亡したカモシカ12頭および動物園などで飼育されている個体6頭から採取した血清を用いて、ポリアクリルアミドゲルでんき泳動法により分析した。ゲル濃度他様々な条件を変えて泳動をおこなった結果、様々なバンドを得ることが出来た。また死亡個体の血清のバンドでも信頼性が高く、血縁の判定には有用と思われた。演習林内で採集したカモシカの糞便39検体の検査をおこなったところ、コクシジウムオーシスト(検出率46.1%)、条虫卵(同25.6%)他が検出された。また病理検査個体より皮下糸状虫が検出された(同71.4%)。

研究成果

• [文献書誌] 能勢 峰, 青井俊樹: "岩手大学滝沢演習林におけるニホンカモシカの環境利用について"岩手大学農学部演習林報告. 34(印刷中). (2003)
• [文献書誌] 三浦慎悟: "日本における野生動物管理の展開-シカと人との関係から-"どうぶつと動物園. 54(10). 10-13 (2002)
• [文献書誌] Maruyama, H., S.Aoki, et al.: "Strongyloides venezuelensis : longitudinal disutribution of adult worms in the host intestineis influenced by mucosal sulfated carbohydrates"Experimntal Parasitology. 100. 179-185 (2002)
• [文献書誌] Ito K., et al.: "Development of bovine super early pregnancy factor (Super-EPF)"J. Jpn. Soc. Immunol. Reprod.. 17. 23 (2002)
• [文献書誌] Kunisaki, T., Mitsuishi, U.: "Community sturucture for mixed species stands of conifer and decidious broad-leaves originating from Pinus densiflora plantations in northern"岩手大学演習林報告. 34(印刷中). (2003)
• [文献書誌] 齋藤直之, 青木美樹子他: "岩手県及び近隣県の家畜並びに伴侶動物、野生動物からのGiardia duodenalisの分離とその確立の試み"日本寄生虫学会大会講演要旨集. 98 (2003)
• [文献書誌] 三浦慎悟, 堀野眞一: "野生動物集団のダイナミックス"朝倉書店. 91-114 (2002)