研究概要 |
トラフグにおいては,白血球におけるGnRHの存在が明らかになっている.しかし,免疫系における役割を詳細に検討していくためには,リンパ球の分類が不可欠である.そのために昨年度より,T細胞のCD3,ヘルパーT細胞のCD4,細胞障害性T細胞のCD8βの構造解析を進めてきたが,本年度はそれらに加えて,γδ型T細胞のTCRγ鎖についてもほぼ決定することができた.別途進行中のIgMのH鎖,L鎖,IgDのH鎖,すでに報告されているTCRα鎖を合わせて,単一魚種としては初めて代表的なリンパ球すべてを識別する手法を得たことになる. 免疫制御因子がGnRHを含むさまざまな免疫系因子の遺伝子発現に及ぼす作用を調べるため,末梢血,あるいはリンパ組織から分離したリンパ球画分に,PHA, ConA, Poly I : C, LPS, PMAを加えて培養し,一定時間ごとに取り上げ,遺伝子発現を調べている.これまでにCD3,CD4,CD8,TCRα,IgL, NCCRP, TNFα,IFN, IRF, IL-10,IL-12,IL-18のmRNA発現をRT-PCRで調べた.IFNはPoly I : Cにより発現誘導が起こった.IL-12についてはPoly I : C, ConAにより発現誘導が見られた.現在,定量PCRの導入を進め,GnRHやリセプターの発現について解析を進めているところである. GnRHは性行動の促進や細胞増殖の調節など,多様な作用を持つ.染色体上でGnRH遺伝子の隣に位置し,細胞増殖調節作用を持つチロシンフォスファターゼ(PTPαとPTPε)に対する作用を調べたところ,GnRHはそれらの遺伝子発現を抑制するという結果が得られた.従って,GnRHがもつ性行動の促進と細胞増殖の調節という2つの作用が,GnRHのPTPα/PTPε抑制作用により引き起こされることが明らかとなった.
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