研究概要 |
今回の研究目的は、上咽頭がんにおける頸部転移機序を分子生物学的に解明し、LMP1の発現を抑制する方策を見いだすことである。本年度はEBウイルスの唯一の発癌遺伝子といわれるLMP1発現と相関する転移関連遺伝子群をすべてスクリーニングすることに努めた。その結果、LMP1の発現は、1)上咽頭がん頸部リンパ節転移と相関すること、2)細胞接着性を低下させること、3)基底膜破壊のkey enzymeであるマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)9などを誘導して間質分解を促進すること、4)転写因子ets-1を活性化し、さらにHepatocyte Growth Factor(HCG)受容体c-Metの発現を誘導し、細胞の運動性を亢進させること、5)インターロイキン8(IL-8)やvascular endothelial growth factor(VEGF)を活性化し血管新生を誘導すること、6)細胞内シグナル伝達物質としては、NF-kB, AP-1が重要であること、など転移に必要と考えられている各ステップにおいて転移を促進する方向に作用することを検証した。特に今回、血管新生因子と腫瘍内微小血管数との関係を免疫組織化学的に調べたところ微小血管数とbasic fibroblast growth factor(bFGD), VEGF, transforming growth factor (TGF)-α、IL-8およびLMP1の発現との間に有意な相関を認めた。
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