研究概要 |
好気性生物において酸素呼吸などにより発生する活性酸素は,ゲノムDNAやヌクレオチドを酸化し,突然変異や細胞死を引き起こす。特にグアニンの酸化物である8-オキソグアニン(GO)は生成量の多い酸化傷害の1つであり,突然変異の主要な原因となる。この傷害を修復する酵素の1つとして,原核生物ではDNA中のGOを取り除くDNAグリコシラーゼのMutM蛋白質が知られている。蛋白質が安定で立体構造解析や分子機能解析に適した、高度好熱菌Thermus thermophilus HB8のMutMについて、種々の合成DNAとの複合体の立体構造を解析し、反応過程中に存在する3種類の反応中間体の立体構造を明らかにした。これらの立体構造から、Glu2とGlu5が触媒基として活性に必須の役割を担っていることや、Arg99がDNAと相互作用することが予想された。そこで変異体Glu2→Ala、Glu5→Ala、Arg99→Alaの各変異型酵素を作製し活性測定を行ったところ、これらアミノ酸残基の役割が明らかになるとともに、これらの結果で示された基質DNAの構造変化や活性部位の残基の配置に基づいて、より詳細な反応機構を考察することが可能になった。
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