研究概要 |
本研究は,研究代表者が1980年代初頭に世界に先駆けて提案した「粒界設計制御に基づく高性能材料の開発」を既にその有効性が実証されてきている構造材料から光電エネルギー変換材料および超磁歪アクチュエータ材料などの機能性材料での粒界設計制御に発展させようとするものである.本年度は,最近特に注目され,変換効率の向上が期待されている太陽電池用多結晶シリコンおよび電子機器用軟磁性材料として重要な鉄基合金について下記の研究を行った. 1.個々の粒界の電気特性に及ぼす粒界性格・構造の影響:電子線誘起電流(EBIC)法およびケルビンプローブ顕微鏡(KFM)法により,予めFE-SEM/OIM法により粒界の性格を決定した多結晶シリコンを用いて粒界電気活性度と粒界電位を測定し,粒界の電気特性に及ぼす粒界性格・構造の影響を明らかにした.その結果,粒界における有効原子面密度が高いほどキャリアの再結合度が小さく,電気活性度が低いことが見出された.また,KFM測定から,粒界におけるポテンシャル障壁の高さが高エネルギーランダム粒界では対応粒界よりも2倍程度高いことを初めて明らかにした. 2.多結晶シリコンのバルク電気伝導性に及ぼす粒界何幾何学配置の影響:粒界幾何学配置の異なる試料における方向に依存した実質的な粒界微細組織を定量評価するために,方向性粒径(方向性粒界密度),方向性粒界性格分布を導入し,これらのパラメータが方向に依存した粒界微細組織を評価するのに有効であることを証明した.例えば,バルク電気伝導性は,方向性粒界密度および方向性ランダム粒界頻度が高くなるほど低下することを明らかにした. 3.鉄基アモルファス合金の磁場中結晶化による粒界微細組織制御:粒界微細組織制御による軟磁性材料の性能向上を目的に,鉄基アモルファス合金(Fe_<78>Si_9B_<13>)を磁場中結晶化・粒成長させ,粒界微細組織形成に対する磁場作用の影響を調査した.試料表面に対して平行に強度6Tの磁場を印加しながら結晶化させることにより,薄帯表面が{110}面となる非常にシャープな集合組織が形成されることを見出した.また,VSM測定の結果,{110}集合組織が形成されることにより,ヒステリシス損失が減少し,軟磁気特性が向上することが明らかとなった.
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