研究概要 |
本研究の目的は,これまで蓄積されている膨大な医療検査データから,感染症発生に関する予測規則の抽出手法を人工知能的手法を用いて確立し,現在問題になっている院内感染予防支援システムを開発することである。今年度実施した研究課題と研究成果は概略以下の通りである。 (1)医療検査データの洗練処理:医療検査データはExce1で提供されており,直接データマイニングのデータとして用いるのには適していない。また,検査項目やデータの構造が医療独特の形式になっている。そのため,感染症発生予測に重要な項目への再編成や計算機処理に適したデータ構造への洗練・変換を行った。 (2)データマイニング手法を用いた感染症発生予測規則発見エンジンの開発:C4. 5と呼ばれる決定木を構築する方法によって感染症発生予測規則の抽出実験を行った。特に,薬剤耐性の観点から再構築したデータベースに対してMRSA(メチシリン黄色ブドウ球菌)の発生に関する相関規則などを抽出して興味ある結果を得た。そのほか,処方に注目した耐性菌情報の抽出なども行った。 (3)院内感染予防支援システムの基本設計:院内感染の予防や院内感染の発生予測を医者が容易に行うためのエキスパートシステムのモデルを設計し一部実現した。今後のネットワーク環境での使用を考慮し,プログラミング言語としてはJavaを用いており,柔軟なデータ処理が可能となるように医療データはXML化している。現在,注目する項目に沿って原因を検索したり,相関規則を指定したときその規則に有意性があるかどうかなどの判定が行えるようになっている。 今後はより洗練されたデータに感染症予測に特化した機能を追加して実用的なシステム構築へ向けての研究を行っていく計画である。
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