研究概要 |
本研究の目的は、膨大に蓄積された医療検査データを利用して,感染症発生規則の発見手法を確立し,院内感染症の早期発見のための院内感染予防支援システムを構築することである。平成15年度に実施した研究内容と研究成果は概略以下の通りである。 (1)院内感染発生予測のための規則発見に関する研究:病院で蓄えられている医療データを基に,原因Xの下でYが成り立つ(X⇒Y)という規則のデータマイニング手法を用いた発見システムの開発を行った。特に,院内感染で深刻な問題となっているMRSA(メチシリン黄色ブドウ球菌)の発生に関する相関規則を,決定木を構築する方法と相関規則抽出アルゴリズムの2手法を用いて抽出するシステムを構築した。また,医療データベースの検索項目の階層化や分類といったデータ洗練を行い,処理の効率化に関する研究を行った。 (2)院内感染予防支援システムに関する研究:データウェアハウス的な観点から,院内感染症予測に特化した検査ツール(統計処理,経時変化),医療データベースを解析する多次元データ解析機能,および医療従事者の予測支援のための情報の視覚化についての研究を行った。開発したシステムは,期間,注目する項目(投薬情報,病名,病棟,など)に沿って原因を検索したり,相関規則を指定したときその規則に有意性があるかどうかなどの判定が行え,注目する項目の統計的な結果や経時変化を視覚的に表示する機能を備えている。また,ネットワーク環境で使用可能なようにJava言語を用いてサーバー・クライアント方式で構築した。 平成15年度は,これまでに得られた結果を医学的な観点から評価する目的で医学関係の学会での研究発表を行った。また,医療データについても他病院のものを加え,これまでに得られた相関規則検証実験やシステムの有効性に対する考察を開始した。
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