研究課題
7〜8月にかけて、サハリン現地調査を研究代表者1名が3週間、研究協力者(大学院生)1名が6週間おこなった。林道の整備状態が悪く、目的地点に達するまでに困難を伴った。高山植生としてはサハリン南部では、チェーホフ山とウラジミロフカ山で調査が行えた。サハリン北部では海岸段丘上のツンドラ植生数ヶ所で調査を行った。このような悪条件の中でも、全体として押し葉標本を約2500点採集できたのは大きな成果だった。DNA試料としては、キンバイソウ属とシオガマギク属について数ヶ所で採取できた。野外調査全体としては、林床植物のノブキをサハリン島新産として確認できたのが成果である。9〜12月に来日していた海外共同研究者であるターラン博士とは、戦前に日本人によって植物採取されたサハリンの日本語地名と現在のロシア地名との照合作業を進めた。これについては日露間の植物採取地名索引としてほぼ完成の段階に達した。これにより、分布図作成などで、戦前に採取された日本側標本が利活用される道が開かれた。12月には本補助金により海外共同研究者であるチュラフレフ博士を含む3名の植物研究者をウラジオストック生物学土壌学研究所から招聘し、サハリンの高山植物を含む極東ロシアの植物相に関する意見交換と来年度のサハリン調査計画の検討をおこなった。ロシア側の分類学的な見解を確認でき有意義であった。1月には、日本側の代表者と分担者の計2名でウラジオストック生物学土壌学研究所を訪問し、来年度のサハリン野外調査計画の検討会を持った。同標本庫でサハリン高山植物の分布パターンの予備調査をおこなった。