研究概要 |
本年度は、4年間の研究期間の初年度に当たるため、全国各地に残る貴重な歴史的環境を時間の許す限り、実際に足を運び、,資料収集に当たるとともに、そこで幕らす現地の人々から話を聞いた。行った場所は運河で栄えた溶湾の町から観光の町へと見事に変貌を遂げた北海道小樽市、江戸時代の港の保存をめぐって困難な状況に直面している広島県福山市鞆の浦、夏目漱石ゆかりの「坊ちゃんの湯」で有名な温泉町、愛媛県松山市道後、江戸時代に木蝋で栄えた町が残る愛媛県内子町、坂道に昔ながらの雰囲気が残る東京都文京区本郷といった町並み以外にも、皆ながらの人々の生活の生業を想像させる里山の残る三重県赤目、つらい思い出だが社会が忘れてはならない戦争の記録が保存される靖国神社等にも足を運んだ。 このうち、小樽と鞆の浦のケースはタイムラグを含んだ類似ケースど描屋できた。現在、港の埋立・架橋問題を抱える鞆の浦の状況は約30年前の小樽の状況と類似している。ともに、船が主要運搬手段だったときに栄えた港町だが、運送中段が陸路に変わることによって衰退の一途をたどってきた。そして、小樽の顔とも言うべき運河を全面的に埋立、道路にする計画が作られてから、その運河を残す運動が女性リーダーを中心に活発化し、最終的には半分埋立てるという計画に変更させた。現在、鞆の浦でも、埋立・架橋計画に反対しているのは女性リーダーを中心とするグループである。果たして、このグループが小樽のような成果を生み出しうるかどうかは、微妙なところだが、おおいに注目に値する。ともに外部組織の支援が大きな役割を果たしていることも、両ケースの類似性として発見された。
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