本年度は、4年間の研究期間の最終年度に当たる。それゆえ、これまでの調査・研究の関連を整理し総合化することが最大の課題となった。そのためのフォローアップ調査はもちろんのこと、このテーマでの知見をさらに深めるために、各地で観察、資料収集、聞き取り調査を行った。フォローアップ調査として行ったのは、鞆の浦の調査である。長年鞆の歴史的環境の保全に関わってきたキーパーソンに改めて聞き取り調査を行い、30年ほど前から現在に至るこの地域での運動と行政の関わりを知ることができた。また、今年度は災害が多く起き、歴史的環境を抱える地域には被害を受けたところも多い。鞆の場合も、8月、9月の台風で大きな被害を受けたので、この実態も調査した。 もうひとつのフォローアップ調査としては、全国町並みゼミに参加し、全国各地で歴史的環境保全活動を行っている方々から、それぞれの地域が抱える問題等の聞き取り調査をした。そこでも、やはり台風で被害を受けた話が聞けた。また、全国町並み連盟の成立当初のエピソードなどを記した資料も入手できた。 知見を広める調査としては、2年前から調べている伝統的祭りに関しては、播磨坂越の舟祭りという珍しい祭りを観察調査した。町並み調査の方は、岐阜県の岩村、明智、長野県の木曽福島、石川県の大聖寺、福井県の武生、福岡県の小倉、山口県の下関、長府、萩、防府、柳井などを調べた。
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