研究概要 |
平成13-15年度科研費の最終年度、継続申請の計画通りに課題はいずれも意義ある形で達成できた。 まずはフランクフルト大学教授のレーマン氏とギリシアの演劇研究者ヴァルポウロ女史を前年度に続いて日本に招待。二人は2003年秋にともに東京で2ヶ月にわたって波状的に開催された、継続申請書に記して計画の第1の「ブレヒト演劇祭」と第2の「ハイナー・ミュラー/ザ・ワールド(HM/W)」演劇祭での開幕シンポジウムにパネリストとして参加し、さらに表象芸術としての演劇における研究や実践現場との国際的な共同研究・共同作業を推進。この2つの演劇祭はその規模や内容において自負するに足る成果をあげた。ことにHM/Wは主催者の一人として、文化庁からの助成金もおり、中国や韓国からの客演を含めた十数のミュラー作品だけの上演を実現させ、それに合わせたシンポジウムやポストトーク、機関誌やニュースレターの発行、それへの寄稿などでも貢献、日本の演劇界にとってもいい刺激剤になった。計画の第1に掲げた懸案のブレヒト論の刊行に向けての研究成果報告書も、別途、提出する。 第3の、世界各地でのミュラー生誕75周年のプロジェクトへの協力も2004年度の企画なのでなお進行中。舞台芸術の国際交流の新たな地平の切り拓きへの模索は今後もよりいっそう展開させていきたい。 第4に挙げた、岡本章編の記録集『<ハムレットマシーン>ドキュメント』や、ドイツのMetzler社"Heine Mueller Handbuch"への寄稿"Heiner Mueller Rezeption in Japan"、岩波講座「文学」の第14巻『演劇とパフォーマンス』への寄稿「<演劇>の揚棄?--ブレヒトからミュラーを超えて」等も刊行された。のみならず、ドイツでさらに2冊の書にも寄稿。ひとつはAisthesis Verlag刊の"Kultur als Fenster zu einem besseren Leben und Arbeiten"にドイツと縁の深かった千田是也など戦間期の日本演劇人を論じた"Blick auf Deutschland-Japanische Theatermacher zwischen den Weltkriegen"、もうひとつはベルリン等々で開催された「ブレヒトと放浪の画家トムブロック」展のカタログへの寄稿"Der Apfel Brechts und seiner Frauen : Reise auf der Suche ihrer Spuren im Exil-Gerda Tombrock gewidmet" (Klartext Verlag, Essen)。いずれもこれまでの科研費での国際的な研究交流による成果である。 第5に掲げた、現代表象文化の研究・実践におけるさまざまな形での学会および演劇現場への協力・貢献は、日本独文学会理事や早稲田演劇博物館COEへの協力の活動などにおいても十分に果たしえたと思う。
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