研究概要 |
今年度は,収書計画の遂行継続は勿論として,基礎研究は,当初の予定では今年度の分野としていた物権法部分は法典規定自体のレヴェルでは変動の相対的に少ない部分であることもあり,方針を若干変更して1804年公布当時の民法典全体についての展望を得るべく,10回ほどの研究会を開催して,すべての条文を通読検討する機会を持った。 これにより,民法典の作品としての内的整合性を探ることを目的としたが,実際,第一に,大革命イデオロギイに基づく部分と古来の法技術に由来する部分との対照が言わば実地検証されたことは勿論として,同時に,1804年当時には唯一の法典であった民法典が,種々の定義規定,関連手続規定(戸籍法や強制執行法の内容をなすような)をも備えた一種の自己完結性を内包していること,関連して第三に,裁判所は勿論,種々の法律家や専門鑑定人の関与を大幅に組み込んでいることが確認された。これらは,日本民法典においては大幅に捨象されている点であり,かつフランス人も必ずしも意識しているとは限らないだけに,当時の歴史社会的起伏が明らかになったことは,大きな成果であった。 フランス側協力者との関係では,フランス法系の国際会議がヴェトナムで開催された機会に出席することによって,フランス側協力者との協議および意見交換を行った。 本研究の成果発表の一環として,2004年6月の比較法学会でのミニ・シンポジウム開催を予定しているほか,論文集の企画に関しては,これも数回の共同研究会の開催を通じて,各項目の執筆予定者との意見交換および編集調整を行った。
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