今年度は、日本中世における紛争解決のあり方を実証的に研究するための前提作業として、主として『鎌倉幕府裁許状集』上巻のスキャナ入力によるテキストファイル化作業を進め、これを完成させた。現在、そのデータベースとしての検索システムおよびその公開の方法等につき検討中である。なお、同・下巻のテキストファイル化作業にも着手したところである。この作業と並行して、研究代表者は前近代中国における法文化の歴史に関心を広げ、本研究の副産物として武樹臣著『中国伝統法律文化鳥瞰』の日本語訳作業を完成させた。その成果は来年度中に刊行される予定である。 他方、研究分担者は、(1)昨年度に引き続いて、鎌倉幕府の裁判において和与(和解)の成立した際に作成される関係文書に関する整理および検討作業を進めた。また、(2)和与をめぐる裁判文書の基礎的史料群の原本に関する調査研究にも着手した。(1)については、和与をめぐる裁判手続のアウトラインを示すことが出来たが、この成果は研究論文「鎌倉幕府の裁判における和与関係文書に関する若干の検討」(二)〜(三・完)として公表した。(2)では、陽明文庫所蔵の丹波國宮田荘をめぐる裁判関係文書に関する整理・翻刻作業を進める一方、本間美術館所蔵の市河文書に関する詳細な原本調査を実施した。前者の成果については、研究報告書『前近代日本社会における「和解」の法史的意義に関する基礎的研究』として纏めたが、後者については来年度以降、その成果を纏めていく予定である。
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