研究課題/領域番号 |
13630007
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
松嶋 敦茂 滋賀大学, 経済学部, 教授 (00024935)
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研究分担者 |
吉川 英治 滋賀大学, 経済学部, 助教授 (80263036)
梅澤 直樹 滋賀大学, 経済学部, 教授 (50093563)
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キーワード | 道徳 / 目的合理性 / 合意 / アイデンティティ / 会話 / 卓越主義 / 言説 / 社会構築主義 |
研究概要 |
本年度は、「合意による道徳の形成」という命題の多面的解析に焦点を当て研究を行った。まず、松嶋はこの課題をD.ゴティエの『合意による道徳』の批判的検討を通して論理的に考察した。すなわち、人間行動の主動機が利己心であるとすれば道徳は社会秩序にとっていかなる意義をもちうるのかという問題は古代から問われてきたところであり、代表的にはホップズのように「目的合理性」のなかから道徳が紡ぎだされてくるとする見方、スミスのように目的合理性=利己心と「同感」を中核とする道徳感情のシステムに補完関係をみる見方が提起されてきた。松嶋は、目的合理性のみから道徳性を紡ぎだす立場の洗練化として近年注目を集めたゴティエ説のロジックに内在するとともに、ハルシャーニやロールズの説と対比することでその特質を抉り出し、そこになお潜む困難を明らかにした。 吉川は、F.ハーンが功利主義に示すアンビバレントな姿勢を手掛かりに共同体主義者の「アイデンティティ」、「会話」という概念を検討することで、A.センの方法論を検証した。とくに、原初状態での倫理的判断に効用概念を援用することの妥当性や「理性的に」形成されるとみなされている選好への社会的、歴史的影響という問題に着目し、センが共同体主義的性格とともに、理性主義を超越した卓越主義的性格をも併有していることを解明した。 梅澤は、経済のグローバル化がすすむなかで「女性」もますます多様化し、女性にとっての「合理性」の多様な内実に即したミクロ的考察を強化しようというジェンダー論の動向に注目し、アジアの出稼ぎ女性移民家事労働者を素材に女性の多様化の一端を明らかにするとともに、「合理性」を叙述する言説そのもののなかに、したがって「合意」をつくりだす基本的ツールのなかに社会的、歴史的影響が色濃いことに目を向けた。 なお、以上の研究成果は下記の論稿としてそれぞれ公刊されている。
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