研究課題/領域番号 |
13630007
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
松嶋 敦茂 滋賀大学, 経済学部, 教授 (00024935)
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研究分担者 |
吉川 英治 滋賀大学, 経済学部, 助教授 (80263036)
梅澤 直樹 滋賀大学, 経済学部, 教授 (50093563)
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キーワード | 現代功利主義 / 契約論 / 自然法 / 合理性 / 相互性 / 正義 / 環境問題 / ジェンダー |
研究概要 |
地球環境問題に象徴されるように時代がひとつの転換点を迎えているかにみえる現代において、経済学の主潮流を支えてきた功利主義思想にも変化が認められる。すなわち、功利主義思想は20世紀に入って形式的には洗練されながらもJ.ベンサムやJ.S.ミルらが保持していた社会哲学としての実質を希薄化せしめてきた感があったのだが、一方で「正義」をあらためて主題に掲げたJ.ロールズらの契約論、他方でF.A.ハイエクらの自然法アプローチに触発され、J.C.ハルシャーニ、R.ヘアー、D.パーフィットらが新たな展開を示し始めた。本研究はそうした現代功利主義の意義と限界を、現代の尖鋭な時代的課題に関わる諸論議と交錯させながら検証することで、経済哲学の現代的再構築の方向性を見定めようとしたものである。 その成果は研究代表者である松嶋が準備中の著作『経済と倫理』に纏められつつあるが、既公刊のものでは松嶋の「福祉・相互性・道徳性」(『彦根論叢』第340/341号)が大凡の結論を提示している。すなわち、同論文は契約論と功利主義それぞれのキーワードである相互性と福祉(welfare)を手掛かりに、D.ゴティエ説の検討により得られた前論文の結論を敷衍して、道徳性の基礎づけには合理性に加えて正義感覚が必要であり、かつ正義感覚に対しては契約論と功利主義の二筋のアプローチがありうることを認めたうえで、後者に前者の契機を織り込む方向に現代的経済哲学の基礎が求められることを展望している。こうした松嶋の見解は、功利主義者P.シンガーが環境倫理学に関わり展開した「動物の権利」論の検討を大きな契機としているが、そのように松嶋の思索に刺激を与えた現代的課題の検討に関わっては研究分担者の梅澤も別掲のような諸論文を発表し、また吉川は別掲の論文とともに、「卓越主義についての一考察-センと共同体主義の比較から-」を準備中である。
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