我々の研究課題は非線形双曲型方程式に対する初期値問題である。この課題は流体力学等、いろいろな理工学的問題と関連して発展してきた。我々の関心はこれらの問題に対する大域的理論である。この間題の難点は有限時間内に解に特異点が現れることである。特異点の代表的な例は衝撃波である。従って我々の問題は「特異点を越えて解を延長すること」である。先ず我々の手法を説明する。偏微分方程式を"cotangent space"の中にまでもち上げPfaff問題として定式化する。それがなめらかな大域的解をもつ場合がある。幾何学的表現を用いれば「解の特異点が解消された」のである。それを"幾何学的解"と定義する。幾何学的解は特異点を持たないので古典理論に従って延長することが出来る、この様にして得られた解を基空間に射影すると多価解が得られる。次に物理的条件を満たす値を唯一つ選び"特異点を含んだ弱解"を構成する。これまでに確立された数学的理論はこの視点から説明出来ると信じていた。しかし予測は正しくなかった。しかし我々の手法は大変自然である、従ってこの視点から推論を更に押し進めることにした。先ず証明したことは「P.D.Lax等により定式化された弱解を上記の手法により構成することが出来ない」ことである。これは昨年度得られた結果である。この課題のモデルは流体力学等の「連続体力学」である。一方、これまでに定式化された「膨張波」においては不連続性が瞬間的に消え連続となる。これは連続体力学の基本に反するのではないかと考えた。この様に考えてくると多くの理論に疑問が湧いてきた。これらの結果の一部を2002年1月、京大数理解析研究所のおける研究集会で発表した。この話題について現在、論文原稿を作成中である。
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