本研究の目的は、最適速度模型を2次元に拡張し、その振舞を理論的及び数値解析的に調べることにある。それにより、粉体流や歩行者流と交通流との関係やそれらの振舞がより明確に解明できると考えられる。 今年度の研究計画の第一は、2次元最適速度模型の完成であるが、その前に1次元模型を多変数型に拡張した模型の性質を調べた。これらの模型の性質は全て、1次元最適速度模型の枠内で理解できることを確認した。この成果は論文として発表されている。 2次元模型については、これまでの研究に基づき国際会議での発表を行なった。その後は模型の精密化を続けている。最適速度模型を2次元へ拡張した場合、渋滞が発生しているような振舞を見せる相が存在する。数値シミュレーションによれば、密度(自動車、歩行者、粉体など)が低い場合にはうまく適用でき、秩序相とそうでない相が存在する。また、歩行者を想定した対向流では自発的な流れの分離も再現できる。これらの成果は本年度の国際会議論文集に掲載されている。 しかし、この模型ではさらに密度を大きくした場合、非現実的な振舞を示す。今年度の後半の研究により、上記の困難を克服し、全ての密度において適用可能な新しい模型を構築することができた。しかし、この模型が例えば歩行者流の模型として適当であるかどうかについては、適切な条件での実験や観測が不足しているため、まだ検討の余地がある。そこで、今年度の終わりに人間の運動の観測を行なった。今後、データ化と模型の検証を行なう予定である。また、秩序相での運動の安定性についても解析的な議論を行ない、一定の条件下ではあるが、安定条件を決めることができた。
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