研究概要 |
愛媛県大洲市周辺の秩父帯では,山北(1998)や松岡ほか(1998)により,緩やかな向斜が基本構造であるとされ,大野山衝上断層は存在しないとされた.しかしながら,魚成衝上断層は御荷鉾緑色岩類を切ることはなく,馬蹄形の地質分布も存在しないことが判明した.この付近の秩父帯北帯には,泥質片岩優勢層が分布しており,この分布を正確に捉えることで,今後の地すべりを研究する基礎的なデータを収集することができた. 九州の四万十帯では,千枚岩優勢の白亜系槙峰層群が,延岡衝上断層に沿って,メランジュ及び泥質岩優勢の古第二系日向層群の上に衝上している.千枚岩優勢層分布域では,三波川帯の泥質片岩の優勢な地帯ど同様の地すべりが発生している.一方,下盤のメランジュ地域では,ブロックと基質の風化・浸食に対する挙動の違いから,急斜面において表層すべりが発生している.宮崎県延岡市から日向市にかけての地域で,泥質岩に含まれるイライトの結晶度を利用して熱履歴を調べたところ,延岡衝上断層を境として明瞭なギャップが存在することが判明した.これを利用して,簡便にメランジュ地帯と片岩地帯を区分できる. 1707年宝永地震時に岩盤崩落を起こした香川県庵治町の五剣山(瀬戸内火山岩類),ここ数年落石災害が発生している和歌山県古座川町(熊野酸性岩類),1972年の豪雨で多くの犠牲者を出した熊本県天草地域(堆積岩),の3地域を対象として,斜面崩壊・岩盤崩落の発生プロセスの調査を実施し,地質構造による規制が重要であることが明らかになった.
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