研究概要 |
岡山県布賀及び広島県久代に産する高温型スカルンでは,初生鉱物として特徴的にゲーレン石・スパー石を産する.この高温型スカルンは,従来考えられていた石英モンゾニ岩のみではなく,それよりもより塩基性のモンゾ閃緑岩も関与していることが明らかになった.これらの火成岩は一連のマグマ活動での産物であり,それらの貫入時の温度条件によって形成されているスカルンのタイプが異なる.ゲーレン石・スパー石スカルンを形成した火成岩の温度条件は地質温度計を用いて690〜930℃と見積もられた.これ以下の温度条件を示すものでは,ゲーレン石・スパー石よりも低温で生成されるザクロ石・ベスブ石・ケイカイ石スカルンを形成している. 高温条件で初生鉱物として生成されたゲーレン石・スパー石は,種々の後退鉱物に変質しているが,今回,ゲーレン石の後退変質過程についての精密な解析を行うことができた. その結果,変質順に次の5つの過程が明らかになった.(1)ゲーレン石は生成時では単一鉱物であったが,その後の温度の低下に伴ってH_2O, CO_2との反応によって,放射状に方解石,アメサイト,ザクロ石成分に富む黒色変質部集合体形成し,その後,中心部にベスヴィアナイトを形成した.(2)周囲の火成岩からSi, Ti, Feなどの成分が供給され,ショウロマイト,ペロブスカイトなどのチタンを含む鉱物が形成された.(3)Siを含む熱水作用により脈状にベスヴィアナイトに変質した.(4)Si, Caを含む熱水作用により未同定鉱物に変質した.(5)ゲーレン石は最終的にはすべてハイドログロッシュラーに変質した.
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