2001年度は熊本県に分布する御所浦層群と岩手県種市町に分布する種市層群について白亜紀珪化植物化石の収集を行うとともに、既存の資料中から菌類および、動物の探索を行った。御所浦層群からは珪化樹幹を、種市層群からは珪化樹幹とシダ植物根茎とみられる化石を採集した。御所浦層群からは未発表の、種市層群からはすでに白亜紀独特の木生シダTempskyaの根茎がみつかっており、Tempskya根茎には世界的にarbuscular菌が知られているので、特にこの地域での調査を行った。種市層群産の既存のTempskya根茎は、新種とわかり、Tempskya uemurae H.Nishida(2001)として記載したが、この根茎中にも多量の菌類がみられた。これらの菌類について、属性、生活史などを明らかにしつつある。また、X線CTスキャナの有用性について2件の学会発表と短報(西田2001)で報告した。 動物化石については、北海道産の炭酸塩ノジュール内植物化石について主に探索している。新しい試みとして、新開発のX線CTスキャナーによる動物本体及び生痕の発見を試みた。その結果、生痕、昆虫とみられる映像を得ることができたが、今後切片で確認する必要がある。既存の裸子植物結実器官からは、切片内に節足動物化石を発見した。この動物は、長い触角を持ちながら5対の足と強靭な口器をもつ。このため既存の分類群にはあてはまらず、最も近縁と考えられる昆虫類と多足類の中間的形態を持った新分類群である可能性があり、検討を続けている。結実器官内に穴を掘って生息するが、体長より長い触角、長い脚を持つことから、結実器官内を移動する草食性動物とは考えられず、強靭な顎の構造からは、結実器官をすみかとして利用する肉食動物である可能性がある。 2002年度は上記の資料についてさらに検討することで、白亜紀の植物組織を中心とした生態系の一部を動的に明らかにしたい。
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