平成14年度は北海道で野外採集調査をおこない、植物破片を含むノジュールを多数採集した。資料には、今回直ちに利用できるようなものは含まれていなかったので、既存の裸子植物結実器官とみられる標本の同定作業と、菌類や節足動物の探索をおこなった。その結果、菌類や節足動物は発見できなかったが、結実器官自体が裸子植物の新たな綱に同定できる特殊なものであるとわかった。裸子植物の新綱を設立し、新種として記載予定である。また、北海道の採集家が小平町で採集した、木生シダの根茎が、ヘゴ科のDicksonia属に近縁であることを明らかにした。新種として記載する予定である。 前年度に引き続き、日本の白亜系鉱化化石産地のうち、熊本県御所浦層群、群馬県瀬林層群、岩手県久慈層群、種市層群、北海道蝦夷層群産の植物化石について、菌類の探索をおこなった。その結果、分解途中とみられる組織内に腐朽菌が広くみられ、白亜紀には腐朽菌が十分に生態系の中で働いていたことがわかった。さらに、VA菌根菌が白亜紀独特の木生シダTempskyaの根茎を覆う不定根の皮層に限って良く発達していることが明らかとなった。同じような生活形をとるヘゴ科の根茎化石についてもVA菌根菌の探索を行ったが、存在は確認できなかった。これは、Tempskyaが特異的にVA菌根菌を利用して栄養摂取していることを示唆しており、このシダ植物とVA菌根菌との密接な共生関係を示すといえる。Tempskyaは白亜紀で絶滅するが、その原因として共生関係の崩壊が推定できる。 節足動物については北海道産の化石で探索を行い、裸子植物の結実器官内に1種、直径約2cmの針葉樹の枝に形成された中えいの組織内に2種の節足動物化石がみつかった。前者はチャタテムシとの類縁が、後者のうち一つはハネカクシ類との類似が明らかになった。昆虫による様々な植物組織の利用形態が明らかになった。成果の一部は2002年8月の第4回日本進化学会シンポジウムで講演した。
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