超伝導コイルは低損失で瞬間的に大きな電力が取れる、すなわち、電力密度が高い電力貯蔵デバイスである。その半面、エネルギー密度は二次電池やフライホイールに劣る。そこで、超伝導コイルと二次電池を組み合わせ、高電力密度で高エネルギー密度の電力貯蔵装置を静止機器のみで実現させることが本研究の目的である。得られた結果は以下で要約される。 1)ハイブリッド電力貯蔵装置の設計や特性の評価のためのシミュレーションを行うため、二次電池および電力変換回路の等価回路モデルを作成した。 2)超伝導コイルと二次電池に電力分担をさせるために、短い周期の電力変動は電力的には大きくてもエネルギー的には小さいことに着目して、フィルタを用いる手法について検討した。その結果、位相遅れが小さい1次ハイパスフィルタおよび1次ローパスフィルタが適当であることが分かった。次数の高いフィルタはカットオフ特性が急峻となる反面、位相遅れが影響し、ハイブリッドの効果が見られなくなる。すなわち、ハイブリッドにすることにより電力貯蔵デバイス間の電力転送が発生し、電力貯蔵装置の容量が増大することが分かった。 3)上記のフィルタを用いる手法とファジィー制御を併用し、超伝導コイルがエネルギー飽和および不足になることを防止しつつ、二次電池の入出力電力も抑制できる制御手法を開発した。 4)高速鉄道の変電所の負荷変動補償および太陽光発電の発電電力の変動補償に本ハイブリッド電力貯蔵装置を適用した場合のシミュレーションを、実測から得られた変動電力データを用いて行った。その結果、どちらの場合においても超伝導コイルのエネルギーの抑制および二次電池の入出力電力の抑制が達成され、ハイブリッド電力貯蔵装置の特徴が発揮されることが分かった。しかしながらその効果は、短い周期でより大電力の変動が発生する高速鉄道の負荷変動補償において、より大きいことが分かった。
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