研究概要 |
1.耕起,化学肥料,農薬は現在の高収量の作物生産を支える不可欠な要素となっているが,これらの多用は,エネルギーを消費するだけでなく,土壌の劣化や流出,環境汚染,耕地における生物多様性の減少などのさまざまな問題を引き起こす原因にもなっている.本研究では,不耕起の技術をわが国の環境に合わせてより実際的なものとするため,土壌表面をある程度撹拝する減耕起(省耕起)に着目し,これに減農薬と減化学肥料(堆肥施用)処理とを効果的に組合せることによって,土壌および耕地生態系の保全に向けた作物栽培の方法について検討する. 2.(1)北海道農業研究センター(芽室町)において実施したテンサイの栽培試験では,減耕起および堆肥施用による,茎葉部の生育と根に含まれる有害性非糖分の量への影響がみられたが,根重および糖分への影響は有意ではなく,これらの組合せによっても慣行栽培と同等の収量がえられる可能性が示された.いっぽう,土壌については減耕起による窒素溶脱の減少,生物相については減耕起および堆肥施用による中型土壌動物(トビムシ,ダニ)の個体数の増加がみとめられた.(2)東京大学農学部附属農場(西東京市)においてはトウモロコシとコムギの1年2作の栽培を行っている.本年まで4年間の結果を総合したところ,いずれの作物でも減耕起によっても慣行耕起と同等の収量がえられることが明らかになった.トウモロコシについては,減耕起によってむしろ初期生育が促進されるという現象がみられ,これは土壌の撹乱を少なくすることでAM菌の感染が促進されたためと考えられた.
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