研究概要 |
黒ボク土においては,減耕起と減農薬との組合せによって,生態系の保全や土壌の肥沃度の向上等の効果が期待できるが,雑草防除が困難であるという問題を生じる.除草剤を用いない条件の下で,減耕起が雑草の生態と土壌生物に与える影響についての知見をえる必要がある. コムギ(冬作)とトウモロコシ(夏作)の二毛作において,土壌表層3cmのみを攪乱する減耕起を,深さ20cmのプラウによる慣行耕起と比較した.6年間同一の耕起法を継続したものと,耕起法を転換し前3年と後3年で異なる耕起法を用いたものとの計4処理を設け,雑草と土壌生物については5-6年目に調査を行った. 冬作においては,耕起法の転換によって雑草の発生が低く抑えられ,減耕起によって雑草量が増加することはなかった.夏作では,数種の一年生雑草と多年生雑草が後3年の減耕起によって増加したが,優先種であるアオゲイトウの耕起法に対する反応は不規則であった.雑草種の多様性は,冬作では前3年の減耕起で,夏作では後3年の減耕起で,それぞれ慣行耕起に比べて増加した.土壌表層付近の埋土種子は後3年の慣行耕起によって著しく減少した.土壌の微生物バイオマス,線虫の個体数,ダニ類の個体数には,前3年の耕起による影響はみられず,いずれも後3年に減耕起を実施した場合に増加した.いっぽうトビムシ類の個体数は耕起だけでなく雑草量の影響を受けていると見られた. 以上より,雑草防除と土壌生物保全の両面において,慣行耕起と減耕起の輪換使用が有効であると考えられた.
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