水産資源学では「無主物」(un-owned property)と「共有物」(common property)はしばしば同義語として扱われてきたが、これは資源の管理制度の有無から区別すべき概念である。この点から「無主物」である資源の沿岸国と遠洋漁業国との分配問題から、次第に「共有物」である資源を地域漁業管理機関等の下でどう管理するかというように、資源をめぐる課題が歴史的に変遷していると解釈できる。 一方、環境経済学では、市場的価値に限定せずに、環境の非市場的価値を定量的に評価する試みもなされている。例えば、市場的価値を持っマグロだけでなく、市場的価値の視点からすれば投棄されてしまう混獲生物に関しても、その持つ経済的価値を市場的価値と非市場的価値の両面から、定量的に評価することが可能である。今日、環境の非市場的価値が政策決定に重要な影響を与えつつある事実を認識する必要があるだろう。 漁業者が環境・資源保全に配慮しようとするとコストがかかる。しかし、市場にはそれを評価するシステムがなかったため、環境や資源保全に配慮した生産者は不利になってきた。したがって生産者にとって環境・資源保全への配慮が不利にならない、ひいては経済的インセンティブになるようなシステムが必要である。つまり、環境・資源保全に配慮した漁業からの生産物と、そうでないものとが流通・販売の過程で区別され、消費者によって選択されるようなしくみが求められる。
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