骨軟骨形成不全症ラットの病因遺伝子(oc4)は、ラット第11染色体上に存在している。本研究は、ocd遺伝子座周辺の詳細なマップを作成し原因遺伝子同定を目指すと共に、この過程で得られた近傍マーカーにより、胎生期の遺伝子型判定を行い、本症の病態発生を解析することを目的としていた。外交配で得られた発症仔を用いた連鎖解析、Radiation Hybrid Panelを用いたocd遺伝子座近傍のRHマップの作成、ocd遺伝子座周辺の系統内多型を利用した系統内発症個体での連鎖解析によるファインマップの作成を行うことにより、最終的にocd遺伝子存在領域をラット第11染色体上の約100kbの領域に特定した。その領域には2つの候補遺伝子が存在し、その遺伝子の配列情報からプライマーを設計し、RT-PCR法によりそれらの遺伝子の配列の一部を増幅したところ、発症においてもそれらの遺伝子の発現が見られた。現在、それらの遺伝子のcDNA全長にわたる塩基醜列決定し、発症での変異の有無を調査している。病態解析では、まず、外交配から得られた発症個体で、系統内発症と同様な多臓器にわたる多様な異常が見いだされることを確認し、それらの異常が単一のocd遺伝子により支配されている立証した。次いで、系統内交配系により得られた、胎齢16.5〜21.5日の発症と同復仔正常個体をサンプリングし、近傍マーカーで遺伝子型を判定後、病態発生を調査した。発症個体は16.5日で体重の有意な低下を示したが、体躯、四肢、尾などの短縮はより胎生後期で顕著となった。全身の軟骨の形成は16.5日ですでに明らかな低形成を示し、18.5日以降では逆に、後肢や肋骨において骨化の亢進を示した。頸椎の椎体および椎弓での癒合、肋骨の癒合と低形成、胸椎の椎骨における骨化中心の二分化、関節における異所性軟骨の形成などの形態学的な異常を確認した。組織観察では、軟骨基質の合成および沈着が発症では明らかに遅延しており、軟骨原基の形成自体が障害されていた。以上の結果から、本症の異常は胎齢16.5日においてすでに開始しており、ocd遺伝子が軟骨原基の形成過程に多大な影響を及ぼすことが確認された。
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