CCケモカインLEC(Liver-Expressed Chemokine/CCL16)はヒトにのみ存在するケモカインで、マウスでは偽遺伝子である。このケモカインの発現細胞種を調べると肝実質細胞でおもに発現しており、MIP-1αなどの炎症性ケモカインを発現するクッパー細胞などでは発現がほとんど認められなかった。血清中の濃度を調べてみると、個人差があるが、0.3-4nMの高い濃度で存在していた。またLECはおもに受容体CCR1とCCR2に結合し、作用ことがわかった。しかし、それら受容体への親和性はかなり低いものであった。LEC以外にも肝臓で発現し、CCR1などをおもに認識する低親和性ケモカインが最近いくつか報告されているが、これらの遺伝子はいずれも遺伝子クラスター中で隣接して存在していた。血流中でのLECなどの機能はまだ不明であるが、以上のことから、我々はこれらをプラズマケモカインと呼ぶことを提唱した。 またマウスCCケモカイン遺伝子クラスターのMIP領域122kbの配列を決定し、CCケモカイン遺伝子5個の構造を明らかにした。このMIP領域とゲノム計画で決定されているCCケモカイン遺伝子クラスターのMCP領域の配列をヒト配列と比較・解析した。その結果、新規遺伝子は存在しなかったが、ヒトとマウスが分岐した後もDNA再編成が繰り返し起こり、ヒト特異的LECなどの種特異的ケモカイン遺伝子や偽遺伝子が形成されたことが明らかとなった。またケモカイン遺伝子はヒトとマウス遺伝子の対応関係が不明の場合が少なくなかったが、本研究により明確にその対応関係が決定された。
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