研究概要 |
胃癌、大腸癌症例を対象にCollagen droplet drug sensitivity test(CD-DST)法を用いて5-fluorouracil(5-FU),mitomycin(MMC),cisplatin(CDDP)に対する化学療法剤感受性試験を施行し、感受性を制御する因子として癌組織中のthymidylate synthase(TS活性),dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD活性),thymidine phosphorylase(ThdPase値ならびに免疫染色),P-glycoprotein(P-GP)発現,p53蛋白の発現、p53遺伝子変異について関連性を検索し、化学療法剤感受性予測因子としての臨床的意義を検討した。対象は胃癌、大腸癌外科的切除症例65例であった。これらの症例の腫瘍組織中のTS活性、DPD活性、ThdPase活性も測定中であり、感受性との関連性について検討した。各薬剤感受性と各種酵素后性との関連を検討する目的で、癌組織中のTS活性、DPD活性、ThdPase値の平均値以上を高値群、平均値未満を低値群の2群に分け、両群間のT/C比を比較した。またThdPase、P-GPおよびp53蛋白の免疫組織学的染色を施行し、それぞれの発現陰性群、陽性群の2群に分け、T/C比を比較した。p53遺伝子のexon5,exon6,exon7,exon8における変異はPCR-SSCP法を用い、いずれかのexonに異常バンドを検出したものをp53遺伝子変異陽性と判定しT/C比を比較した。またさらにdirect sequence法を行い、詳細な塩基配列を決定し、これらと感受性の結果の関連性についても検討した。5-FU、MMC、CDDP曝露後の平均T/C比はそれぞれ胃癌で79.5±19.6%、81.2±26.5%、81.4±25.9%、大腸癌で86.7±10.8%、101.6±7.2%、102.1±12.3%であった。5-FUに対する感受性はTS活性高値群において低い傾向を示した(p=0.087)が、DPD活性値との間に有意な関連は認めなかった。ThdPase定量では高値群において,5-FUに対する感受性が低い傾向を認めたが(p=0.086)、免疫組織学的染色の結果、ThdPaseの発現性と5-FU感受性との間には有意な関連は認めなかった。
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