研究概要 |
IP_33キナーゼノックアウトマウスにおける機能的変化 IP_33kinaseノックアウトマウスと野生種における、総頚動脈の10分間遮断による前脳虚血に対する海馬の遅発性神経細胞死の程度の異同を組織学的に検討したが、虚血感受性には有意差を認めなかった。記憶能力につき、passive avoidanceによる野生種との比較を行ったところ、同ノックアウトマウスでは有意に記憶能力が劣っていた。現在、このメカニズムにつき、電気生理学的に検討中である。 脳虚血におけるgap junctionの役割 20分間両側総頚動脈遮断後の野生種C56BL/6マウスを用いて、gap junctionの脳内主要構成蛋白であるconnexin(Cx)32,36,43のmRNA/蛋白の虚血後の海馬における経時的変化を検討した。その結果、Cx32,36では海馬CA1においてmRNAレベルでほとんど変わらないにもかかわらず、蛋白レベルでは虚血48〜72時間後にかけて有意に増加していることが明らかになった。このことはCx32,36の発現がtranslationalあるいはpost-translationalに調節されていることを示唆する。また、二重蛍光免疫組織化学を用い、Cx32,36が虚血抵抗性の海馬中間神経細胞に一致して発現していることを明らかにした。 さらに、虚血におけるgap junctionの果たす役割の一端を明らかにする為、Cx32ノックアウトマウスと野生種の10分間の両側総頚動脈遮断による前脳虚血に対する虚血感受性を比較し、Cx32ノックアウトマウスが虚血に対し、より脆弱であることを明らかにした。このことは、Cx32が虚血に対し、保護的に作用していることを示唆するとともに、Cxの発現に上述の如く細胞特異性があることを考えれば、Cxが虚血に対する各細胞の脆弱性・抵抗性をも規定している可能性がある。
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