骨関連悪性腫瘍の転移メカニズムの解明とその制御

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13671508
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 名井 陽 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (10263261)
• 研究分担者: 鳥塚 之嘉 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (20324775) ; 上田 孝文 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (00324773) ; 吉川 秀樹 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60191558)
• キーワード: 骨肉腫 / 転移性肺腫瘍 / VCP / NF-kB / アポトーシス / パルテノライド

研究概要

マウスDunn骨肉腫細胞は、尾静脈注射すると約80%で肺に転移巣を形成する。この肺転移巣から分離した骨肉腫細胞を再度、尾静注して肺転移巣を作らせるという操作を8回繰り返すことにより得られたLM8細胞は高い肺転移能を有する。Dunn骨肉腫細胞は、マウス皮下に移植すると皮下腫瘍を形成するが、肺転移巣は通常形成されない。LM8細胞を皮下移植すると2〜3週間で肺転移巣を形成する。昨年までに我々はLM8とDunnの遺伝子発現の違いを検討し、VCP(valosin-containing protein)がLM8で強く発現していることを見いだし、LM8ではVCPの強発現によるNF-kBの恒常的活性化によってアポトーシス抵抗性となり肺転移が形成されやすいことが示唆された。
そこでNF-kBの活性阻害によりLM8細胞の肺転移抑制が可能ではないかという仮説のもとに、NF-kBの阻害剤を用いた転移抑制実験を行った。用いた薬剤は天然ハーブ由来のNF-kB阻害剤であるパルテノライドparthenolideである。これは片頭痛に対する有効性が臨床試験で証明されている民間療法剤として知られるフィーバーフユーの主成分であり、最近、その主たる薬理作用がNF-kBの活性阻害であることが示された。
in vitroでパルテノライドはM8細胞におけるNF-kBのDNA結合の阻害、転写活性の阻害、VEGFの産生抑制、アポトーシス誘導、細胞遊走能の阻害効果を示した。LM8細胞をマウス皮下に移植し、パルテノライドの予防的投与(腫瘍移植と同時に開始)および治療的投与(腫瘍移植後17日目より開始)を行ったところ、予防的投与では肺転移巣の形成を強力に抑制したが、原発巣の増大に対する抑制効果や、治療的投与実験での、肺転移巣の増大抑制効果は見られなかった。以上からパルテノライドは骨肉腫の肺転移を特異的に阻害することが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Ishii, T.: "Unusual skeletal metastases from myxoid liposarcoma only detectable by MR imaging"European Radiology. (In press). (2003)
• [文献書誌] Miyaji, T.: "Monoclonal antibody to parathyroid hormone-related protein induces differentiation and apoptosis of chondrosarcoma cells"Cancer Letters. 199・2. 147-155 (2003)
• [文献書誌] Myoui, A.: "C-SRC tyrosine kinase activity is associated with tumor colonization in bone and lung in an animal model of human breast cancer metastasis"Cancer Research. 63・16. 5028-5033 (2003)
• [文献書誌] Ueda, T.: "Overexpression of the Wilms' tumor gene WT1 in human bone and soft-tissue sarcomas"Cancer Science. 94・3. 271-276 (2003)
• [文献書誌] Kawaguchi, S.: "Extraskeletal myxoid chondrosarcoma"Cancer. 97・5. 1285-1292 (2003)
• [文献書誌] Matsui, Y.: "COL11A2 collagen gene transcription is differentially regulated by EWS/ERG sarcoma fusion protein and wild-type ERG"Journal of Biological Chemistry. 278・13. 11369-11375 (2003)
• [文献書誌] Myoui A: "Biomaterials in Orthopedics"Three-dimensionally engineered hydroxyapatite ceramics with interconnected pores as a bone substitute and tissue engineering scaffold. 457 (2003)