研究分担者 |
浜田 信城 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (20247315)
渡辺 清子 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (70148021)
小園 知 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (40084785)
はい島 由二 国立医薬品食品衛生研究所, 療品部, 室長 (80228379)
石川 恵里子 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (10104340)
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研究概要 |
本研究では、歯周病の中でもPorphyromonas gingivalis(Pg)が主病原細菌として関与する成人性歯周疾患の予防と治療の為に、粘膜免疫療法を応用することにより歯周病ワクチンの基礎的研究並びに感染モデル動物を用いたワクチン抗原の薬効を評価する事を目的とする。現在、成人性歯周炎はPgが歯周組織に付着・定着後、本菌が産生する組織障害性のプロテアーゼおよび炎症性サイトカイン誘導能を持つ線毛やLPSの作用により惹起されると考えられている。しかし、現在のところ同症の予防・治療には有力な手段がなく、根本的な治療方法の開発が切望されている。本研究では、Pgの菌体表層抗原であると共に病原因子でもあるこれらの各種菌体物質に注目し、そのエピトープ構造を解明した後、天然由来菌体表層成分或いは化学合成したエピトープフラグメントをリコンビナントコレラトキシンBサブユニット(rCTB)とコンジュゲートした免疫プローブを調製し、Pgに対する強力な免疫抗体を誘導する粘膜結合型新型薬剤の開発を目指す。また、歯槽骨吸収を指標とした歯周病モデル動物を用い、上記ワクチン抗原の予防効果を判定する。 本年度は、Pg線毛/rCTB免疫プローブをマウス鼻粘膜に免疫すると、血清中に高い線毛特異的IgG・IgA抗体価の誘導と共に唾液並びに鼻腔領域粘膜中にも分泌IgA抗体価の誘導が優位に増強された結果を基に、無毒化LPS/rCTB免疫プローブの調製とそれを用いた鼻腔粘膜投与における免疫応答を評価した。 弱ヒドラジン処理によりエンドトキシン活性を除去したPg-LPS(抗原保持率:intact LPSと同程度)とrCTB(10μg)をマウス鼻腔内に併用投与した結果、いずれの群においてもnative LPSに対する血清抗体価の上昇は認められなかった。また、naive線毛をワクチン抗原として利用するにあたり、LPSの混入による安全性の問題が残るため、Pg線毛のペプチドフラグメントによる免疫誘導を試みるため、抗原性に関与すると思われる6種のペプチド抗原(1-15,19-35,110-126,235-250,277-292,302-317)を化学合成した。さらに、Pg線毛/rCTBワクチンの効果判定に利用可能な成人性歯周炎のモデル動物実験系の開発を試みた。Sulfamethoxazole/trimethoprimによりラット口腔内を除菌後、Pgを2%カルポキシメチルセルロース溶液に懸濁し、その0.5mlを口腔内に1日おきに計6回接種した。対照群は、2%カルボキシメチルセルロース溶液のみを接種した。最終感染後、42日後に安楽死させ、歯槽骨吸収を指標として判定した。歯槽骨吸収は、上顎骨歯槽骨のセメントエナメルジャンクションから歯槽骨頂部までの距離を実体顕微鏡にて計測した。その結果、実験群は、対照群と比較して有意に歯槽骨の吸収が見られた。今回のラット歯槽骨吸収を指標としたPg感染モデル動物実験は、ワクチン療法の効果判定に有用な歯周病モデル動物実験系になり得る可能性が非常に高い。
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